マイホーム購入 地震のリスクも頭に入れよう

「夢のマイホーム」。
先立つのは、まずお金。住宅ローンを組むことになる。返済は長く続くが、完済の暁には、誰にも追い出されることのない終(つい)の住み家。家賃を払い続けるのなら、こちらの方が得のお決まりの営業トーク。果たしてそうだろうか?一生にわたる多額の借金を背負う決断の前に、注意喚起の声にも耳を傾けたい。

「夢のマイホームが一瞬にして重いマイナスの荷物になり得る」と語るのは、著書「倒壊 大震災で住宅ローンはどうなったか」(98年)があるノンフィクション作家の島本慈子(やすこ)さん(58)だ。住宅ローン制度ができてから大都市圏を襲った初めての巨大地震阪神大震災(95年)の現場で、ローンが生んだ悲劇を追った。島本さんは、地震で家が消滅してローンだけが残った戸数が1万5000あったと推定している。「日本は地震大国だから、誰にでも起こり得る。地震保険に入り、地盤や家の品質に神経をとがらせるのは当然だ」


 島本さんが懸念するのはもう一つ。阪神大震災で、マンションの建て替えか補修かを巡って入居者の合意形成の難しさがあらわになったにもかかわらず、消費者に区分所有法の認識が低い点だ。5分の4の多数決で建て替えが可能。「年を取れば、思い出が詰まって住み慣れた家を出て行きたくない。それを多数決で失うのはすごい苦痛」という。中には裁判沙汰になったり、建て替え決議に10年以上も要し、仮住まいの家賃と住宅ローンの二重払いで生活が困窮する人も少なくない。


 また、阪神大震災の時になかったのは超高層マンションだろう。「災害の歴史は常に想定外の歴史で、自然の力を人間は読み切れない。大きな被害が出た時、入居者の数が多くて、その収入格差が大きい超高層マンションでの合意形成はなおさら困難だろう」と話す。
揺れを増幅させる長周期地震動の仕組みも分かってきた昨今、免震・耐震マンションも含めほとんどの高層建築物はこの揺れに対応できていない。地盤が弱い都心部に乱立する高層マンションを購入する勇気は私にはない。

宮城沖、関東、東海地方と30年以内に大地震が起こる可能性は概ね80%とされる。家族との憩いの場やステータスとしての持ち家を否定するつもりはないが、長期の住宅ローン返済は、リストラ以上に大きなリスクと考える。

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